通訳案内士試験の日本歴史の勉強には、『もういちど読む 山川日本史』が最強ですというお話をしましたが、読んで頭に入れるには、なかなか膨大な内容ですよね。
「ビジュアル的にも楽しく、しかも分かりやすく歴史の流れや文化史を学びたい!」そんなワガママな願望を叶えてくれる、素晴らしいサイトが今回ご紹介する『WEB玉塾』です。
ワタクシはその妥協なき完成度に衝撃を受けただけでなく、「自分にとって職業とは」を大いに考えさせられました。働き方という観点でも大きな影響を受けたサイトです。
WEB玉塾は、玉先生のあふれる熱意とそれを支えるオーナーでできている。
WEB玉塾は、『高校の授業をアニメ化して分かりやすく教えてくれる』サイトで、日本史だけでなく数学・化学など多岐にわたる科目が開設されています。
各動画は、元高校教諭であり、イラストレーターでもある運営者の玉先生が独自に作成したもので、構成も内容も素人のシロモノではありません。ワタクシは日本史のビジュアル資料を検索していて偶然見つけたのですが、突然始まった動画に「なにこれ!おもしろい!!」と一気に引き込まれました。
と同時に「なぜこんな完成度の高い動画をいきなり見られたのだろうか」という疑問が湧いたのでした。
利用に当たって登録・課金は一切不要、広告表示もなし。
これはWEB玉塾が主に高校生や看護学生さんのために作られており、学校や居住地域、家庭の経済状況に関係なく、ネット環境さえあれば誰でも勉強できる場所を提供するという、玉先生の理念によるものです。
WEB玉塾には“1口オーナー制度”があり、オーナーになるとひと月500円の出資で運営を支えるしくみになっています。オーナーには受験生の親御さんやOB・OGの方が多いようです。さんざんお世話になったいい年した大人であるワタクシですから、職を得た暁にはオーナーになるつもりです(春までには!)。
受験シーズンは1日平均4,200人が利用しているWEB玉塾。1ユーザーながら、提供している価値の対価を考えると、せめて1人100円/月くらいもらっても、と思ってしまいます。しかし、「登録なしで誰でも利用できる」という理念が、お金には代え難い価値を生んでいるのだとも感じ、今はオーナー制度の発展を願うばかりです。
効率がすごい。「流れ」と「文化史」の内容を見事に凝縮!
さて、日本史の動画は「流れ」「文化」「暮らし」のカテゴリーに分かれており、膨大な本数の動画が用意されています。しかも要点ノートまで用意してくれています。
そして、なによりすごいのが無駄を徹底的に省き、要点を絞った内容です。
普通、日本史の動画授業と言えば各時代ごとに数時間はかかると想像するでしょう。しかし、WEB玉の動画は1本3分〜5分のものがほとんど。1本見終わるのはあっという間です。しかも、黒板の前に映った講師の授業を延々聴くタイプのものではありません。
動画中のアニメ玉先生を始め、登場人物は皆とても早口です。画面の展開も早いので、ついていけないこともあると思います。しかしそれはわざと高速にしているとのこと。たしかに、そのおかげで集中力が切れることなく見続けることができます。
ついていけなくなったときは、スペースキーで一度停止、左←キーで5秒前に戻せます。
個性的なキャラクターたちと、記憶に残らせる工夫の数々。
アニメの登場人物は、日本史らしく甲冑を身にまとい軍配を持った玉先生と学ランのパペット君(名前あったかな)、買いもの帰りのおばちゃん の3人です。玉先生の関西弁が楽しく、3人の漫才のような掛け合いでリズミカルに授業は進みます。
各時代をアルファベットになぞらえて展開するなど、人物や出来事の記憶がごちゃごちゃにならないよう印象づける工夫が随所に光ります。ときには若干強引なこじつけ気味?になることもありますが、そこはすかさず学ラン君とおばちゃんの鋭いツッコミがはいります。
そんなキャラクターたちのやりとりも含め、「いかに記憶に定着させるか」にこだわって作られているかが伝わります。手描き文字も味があってとってもいいんですよ。
動画は、あくまでセンター試験を受ける高校生を対象に作られていますので、大人な方々はそのノリやスピード感についていけない部分もあるかもしれません。
しかし、そもそもが対象外なのですから、高校生気分で若者の世界にお邪魔させていただき勉強するのも楽しいものです。高校時代にもっと全力で勉強すれば良かったな、と何度思ったことか・・・。
その生き方に学ぶこと。会社員、教師、そしてWEB玉塾開設へ。
サイトを覗けば、玉先生の頭脳明晰っぷりが伝わると思います。これだけの科目について高校学習レベルの授業ができる(しかも理解した上でアニメにできてしまう)先生をワタクシは他に知りません。
なにより、高校の先生という天職に就きながら、そこをゴールとせず、自分の能力をフルに生かした理想の仕事を創りだし、実現させる。これは並大抵の決意ではできないことだと思います。前例もなかったことでしょう。
日本史のアニメだけをとっても、縄文時代から近現代史まで、台本からイラスト・動画制作・・・。作業量を想像しただけで、気が遠くなるような道のりです。しかも、それを上司から指示されるわけでも、締め切りを言われるわけでもない環境でやりきるわけです。並の人間ならやっても鎌倉時代くらいで力尽きると想像します。
ワタシがWEB玉塾に偶然出会って本当によかったと思うのは、こういうことを「やってのける」人物が実際に存在するのだと知ることができたことです。
今まさに人生迷走中のワタクシ。やりたいことを形にできない意志の弱さに落ちこむ中、今後の道に大きな影響を与えてくれたサイトなので、思わず熱く語ってしまいました。
がんばっていこー!(←by玉先生。こんな風に受験生を励ましてくれます。)